住野よるさん原作の、くてくて(青くて痛くて脆い)が劇場版として公開日を迎えたため、さっそく映画館で鑑賞してきました。
ヒロインの秋好が死ぬ原因についてや、それに関連する嘘、予告CMのラストで彼女が言っていた「気持ち悪い」の意味、単純におもしろいかつまらないか?などなど、
くてくてのネタバレ感想について、今回の記事では書いていきたいと思います。
※物語の核心に触れる、ネタバレ要素が書かれています。
ネタバレNGな方はここでそっ閉じ頂けますと幸いです><
青くて痛くて脆いで秋好が死ぬ原因は?
キミスイこと「君の膵臓をたべたい」では、ヒロインの山内桜良が衝撃的な最期を迎えたことで注目を集めました。
「病気を患う恋人」という設定からくる、ストーリー展開に対しての鑑賞者の先入観を逆手に取った、ある意味爽快な裏切りでしたね。
今回の「くてくて(青くて痛くて脆い)」でも、ヒロインの秋好寿乃が死ぬことが確定していて、
予告の中で、主人公の田端楓は秋好寿乃を回想しながら「彼女はもう、この世界にはいないけど」「死んだ」ということを明言しています。
・・・ただし、この予告編は、まだくてくての物語を知らない人へ向けてミスリードを促すための導線でした。
秋好が死ぬというのは嘘です。今もピンピンしていますし、楓と二人で立ち上げた慈善活動サークル、モアイの代表として多くのメンバーに囲まれながら活動しています。
予告編で楓の口から語られた秋好の死というのは、「彼女はもうこの(僕の心の中の)世界にはいないけど」、「死んだ(ことにしなきゃやってられない)」ってニュアンスなのでした。
かつて楓と秋好のふたりで立ち上げ、二人三脚で細々と活動していたモアイは、多くの学生を巻き込み巨大な組織へと姿を変えました。
秋好はそんな巨大組織のメンバーである脇坂と恋愛関係になり、それに嫉妬し居場所が悪くなった楓はモアイを脱退します。
「秋好は変わってしまった・・・」そのことに対する復讐心から、楓はモアイを潰すために奔走するのですが、この復讐こそが、実は青くて痛くて脆いの本当のストーリーの中核だったりします。
秋好が(楓の中で)死ぬ原因は、秋好が楓にとって不都合な行動を起こしたからですね。本当は生きてるんだし、表現がおかしい気がしますが、これが死因です。
ちなみに、秋好の「世界を平和にするために活動する」という理想や理念は変わっていません。組織が大きくなり、活動内容がより具体的になっただけで、秋好はそのままなんですね。
楓は勝手な思い込みで、モアイを去り、復讐心を燃やし、実際に復讐を実行し、それに後悔して、懺悔して、、と暴走していきます。
この「痛い子ちゃん」な主人公を表現する言葉がまさに「青くて痛くて脆い」という作品のタイトルだったんですね。
青くて痛くて脆いがおもしろいともつまらないとも言えない理由
ところで、私の「くてくて」を観た感想は、「つまらないことはない。でもおもしろいこともない」でした。チケット代の1900円を払ったのは別にいいけど、リピートはないかな・・・です。
評判のいいこの映画ですが、私は周りの評価ほどは入り込めませんでした。
その最大の理由が、登場人物に感情移入できないからかもしれません(ポンちゃんこと本田朝美だけには共感できました)。
主人公の楓は、先述したとおりのクズ野郎です笑。思い込みだけで勝手に突っ走って勝手に後悔して勝手に懺悔を始めるような独りよがりのクズ。
若いんだから誰しもこういう青くて痛くて脆い時期はあるよねーとは理解するものの、銀幕の主人公にふさわしいようなキャラクターではありません。
また、ヒロインの秋好は、理想論者で独善的。他人のことを考慮せず自分ひとりの考えをよしとし貫こうとする様が、これまた青くて痛くて脆いです。
大学での講義中に挙手をして、教授に向かって「暴力は良くない戦争は良くない」「皆んなが協力し合えば世界は平和になると思います」と意見し周囲からの失笑を買うタイプ。
今、戦争の真っ只中にある国の人たちが、なぜ暴力と暴力で争っているのか?という理解をしようともしないまま一方的に「それはダメ」というのは独善の押し付けでしかありません。
ちょっとくらいは相手の立場にもなって考えようよーと。
マシンガンを抱えて戦う子供の横に立って突然、「それ絶対ダメなことやってるから武器捨てなよー」と、
ことの背景も理由も聞かずに自分の意見だけを述べても「はぁ・・・?」ではないでしょうか。
秋好のそういうところが嫌いだったかなー。。
ただ、キャストは良かったです。楓役の吉沢亮くんも秋好役の杉咲花さんも、さすがの名演技でした。
それだけに、あれだけ演技の上手な俳優さんを起用しているのだから、もっと登場人物の心理描写が分かる表現が欲しかったです。なんかもったいない。とくに杉咲花さんの秋好が。
青くて痛くて脆いの「気持ち悪い」のシーン
そんなこんなで、主人公にもヒロインにも理解はできるけど共感はできない感じだったのですが、
秋好寿乃が人として「一皮むけるんじゃないか?」と思わせるシーンがありました。
それが、映画の予告でも使われた、秋好の「気持ち悪っ」というリアクションです。
劇中で楓が思いついた、モアイへの復讐の方法はネット炎上でした。
「モアイが主催する懇親会やイベントに参加した人の個人情報が、就活先などの企業に勝手に横流しされていた」ことを掴み、
その事実をSNSのTwitter(?)に投稿し、多くの人の目に触れさせてモアイを追い込むやり方です。
マッチ1本火事の元とはよく言ったもので、140文字以内の文章と画像1枚で、このご時世、一瞬で燃え盛りますからね。
この炎上作戦を実行したのが楓だと勘づいた秋好は、楓を自白させます。
楓の自白によって、「秋好とイチャイチャしながら2人きりで活動してきたのに、メンバーは増えるし秋好は彼氏を作るし、僕は裏切られてかわいそう」
それが復讐の動機だと知った秋好は、思わず目の前の楓を「気持ち悪い」と非難します。
劇中の秋好の心理描写が少ないため実際は分かりませんが、おそらく秋好が誰かを恨んだり気持ち悪く思ったりしたのはこれが初めてでしょう。
独善的な理想論だけではなく、初めて自分の中のネガティブな感情と向き合うことになった秋好。
この経験は、秋好を人として成長させてくれる一助になると思います。清濁併せ呑む経験がなければ独善からは抜け出せませんからね。
物語のクライマックスでは、事件の1年後に楓が懺悔するべく秋好と立ち会うところで幕を閉じます。具体的な結末の描写はありません。
1年後の再開のあと、スタッフロールの向こう側で、
秋好が「お前気持ち悪いけど、まあいいよ。許す。」くらいのことを楓に言うことができていれば、それは秋好の清濁併せ呑む経験の上での成長だと祝福できるでしょう。
私は、「今更、なにノコノコ現れて勝手に謝ってんじゃバカが。本当自分勝手だなお前は、二度と私の前に現れるな!」
くらいこっぴどく楓を突き放した方が、物語的にはスマートな気がします。
・・・まあ、それもそれで後味悪いですけど。笑
青くて痛くて脆いのネタバレ感想まとめ
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映画版くてくては、私にとっては良くも悪くもない作品だったのですが、この物語をとおして考えさせられることも多くありました。
自分勝手に思い込みだけで相手を恨んじゃいけないとか、独善的な思い込みだけで理想を押し付けるのは良くないとか、Twitterで炎上とか胸くそ悪いから止めたほうがいいよねとか。
お話としては微妙だけど、映画館を出た後の自分が生きるための教訓としては良かったです。
それにしても、役者さんの演技は素晴らしかった。楓も秋好も董介もポンちゃんも皆んな名演でした。
それだけに・・・という心残りは正直あります。もう少しキャラクターへ感情移入できるポイントがほしかったかなー。。。
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